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ウェルビーイング視点から見るハイブリッドワーク – 注意すべき在宅勤務特有の課題とは

23 8月 2022

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健康経営やウェルビーイング経営への注目とともに、「ウェルビーイングな働き方」に対する企業の関心は高まっています。また、普及が進む昨今のハイブリッドワークも後押しするかのようにワーカー自身のウェルビーイングに対する意識を高めるきっかけになっています。

時宜にかない、7月14日と15日の2日間にわたって開催された「ウェルビーイング エキスポ&カンファレンス 2022 Summer」に弊社シニアワークスタイルコンサルタントの岸田祥子が登壇し、ハイブリッドワークの最新動向についてウェルビーイングの観点から講演を行いました。この記事ではその内容の一部をご紹介します。

 

コロナ禍以降の国内のハイブリッドワーカー約7,000人のデータから得た最新動向

今回の講演内容は、弊社がこれまでのABW導入支援プロジェクトにおいて実施したサーベイから得られたデータをもとに、昨今の働き方とウェルビーイングの関係性を探るというものでした。弊社のサーベイでは、働き方やオフィスに関する項目の1つとしてウェルビーイングに関する質問を設け、ワーカーの仕事に対する満足度やストレスレベルなどを把握しながら総合的なスコアを測っています。今回分析対象となったデータサンプルは2021年8月から2022年6月の間で回答を得られた6,835人分で、パンデミック以降のウェルビーイングな働き方の動向を把握する弊社の最新データとなっています。

回答者の働き方を見てみると、半数を超える53%がサーベイ実施の直近6ヶ月で在宅勤務を週に3日以上行っており、多くの人がオフィス以外の場所も積極的に活用している実態がわかりました。このように積極的にハイブリッドな働き方を実施するワーカーが多く含まれる日本国内のサーベイにおいて、ウェルビーイングとの関連性を調べることは弊社にとって重要なテーマでした。

 

3つの特徴と課題

分析を進めていく中でいくつもの発見がありましたが、ここでは3つ挙げます。

① リモートワークの頻度が高いほど、ウェルビーイングスコアが高い

1つ目の発見は、リモートワークを行う日数(頻度)が高い人ほど、ウェルビーイングスコアが高くなる傾向があることでした。驚くべき結果ではないかもしれませんが、私たちの予想とは少し異なるものでした。というのも、オフィスで働く方が人と質の高いコミュニケーションをとれたり、会社やチームへの帰属意識を感じやすかったりすることがわかっているため、週5日の在宅勤務を行うフルリモートではウェルビーイングスコアが低下するのではないかと考えていました。しかし実際には、ウェルビーイングスコアが毎日オフィスで勤務する人からフルリモートで働く人の順で右肩上がりに綺麗に並ぶ興味深い結果となりました。

ウェルビーイングに関する複数の項目の中で毎日オフィス勤務をするグループとフルリモートで働くグループの間で最もスコアに開きがあったのは、「仕事以外の活動のために効果的に仕事を切り上げることができるかどうか」という項目でした。通勤にかかっていた時間の有効活用や仕事意識からの切り替えがしやすいリモートワークは、やはりワークライフバランスの充実に特に効果的であると見受けられます。

また2番目に開きがあった項目は自身のストレスレベルに関する項目でした。オフィス出社を必要とするワーカーは仕事上多くの人と会う必要のある方や緊急のトラブル対応を必要となるケースが多い人のため、ストレスに対する精神的な擦り減りも自然と多くなると考えられます。また通勤そのものが大きなストレスと答える回答者も多く、在宅勤務を経験したことでその実感が増した方も多くいると思われます。

② 一部のワーカーに偏るハイブリッドワークでの業務負荷増がウェルビーイングに影響

調査結果の分析では、ウェルビーイングスコアの高いグループと低いグループで業務の実態についても調査しました。

その結果、ウェルビーイングの低い群は業務量の増加が顕著となっていました。もともとスコアの低いグループはオフィスの出社率も高いことから、出社を必要とする業務を行いながらリモートで働くメンバーとの確認業務が増えたことなどが理由として考えられます。

このような場合で特に懸念されるのは、基本的に全社でハイブリッドワークで業務を進めながらも特定部署のみ在宅勤務が不可、といった組織です。例えば機密情報を取り扱う経理や人事などの部署は毎日オフィス勤務が求められるという場合、出社しながらも会議はリモート実施がほとんどで業務における確認の手間がかかり、結果として会社としてハイブリッドで進める上で業務の皺寄せを受けることになります。

また別の視点としては、就活や転職を経て入社してまだ日の浅い方が会社内でのネットワークを構築できておらず仕事をうまく進められないケース、また管理職層の方がリモートでの業務分担がうまくいかないケース、というのもハイブリッド環境下で仕事が増える背景としてよくある話です。この手の課題には、遠隔で業務を進める上で適切なチームコミュニケーションをとることが重要となることが多くあります。一度チーム内でどれくらいの頻度で、どのような方法でコミュニケーションをとることが適切か話し合うのも1つの方法です。

詳細の把握にはさらなる調査が必要ですが、業務量が増えている部署や個人に対してハイブリッドワークでの仕事の進め方やプロセスの整理や見直しを行うことは当然ながら必要となります。

③ ハイブリッド環境で新たに人のつながりを維持するコミュニケーション方法を作れるかが重要

また仕事に対する意識の違いを見たところ、スコアの高いグループと低いグループで開きが顕著だった項目は「自身が所属するチームとのかかわり方に対する満足度」「他部門とのかかわり方に対する満足度」の2つでした。やはり、ハイブリッドワークによって「人のつながりが希薄になったこと」は私たちへの影響として大きく、このようにウェルビーイングの低下にも顕著に表れています。

従来の働き方で行ってきた毎日顔を合わせるコミュニケーションを別の方法で完全に代替することはたしかに難しいです。しかし、ハイブリッド環境でもコミュニケーションの適切な方法や使用するツール、頻度を考え直し実施することによって人のつながりを維持することは可能です。

ここでよく挙がる課題は、ハイブリッドワーク導入後のコミュニケーションが実は自身の業務の必要最低限な量しかできていないことです。ワーカーが分散して働くようになったことで、コミュニケーションも各個人によって様々な方法で行われるようになりましたが、円滑に連絡を取り合う方法を整理した社内・部門共通のルールや適切なツールの導入が行われていないケースが多々あります。その場合、日々の業務の中でとるコミュニケーションは目の前の業務に関することのみ、となってしまい、気づいたら組織として仕事を進めていく実感や達成感が得られないという状態に陥ります。

人とのつながりの実感や満足度が下がることによる会社への帰属意識の低下や離職率の増加が、残念ながら最近の世界的な傾向となっています。皆がオフィスで働いていた時と同じような円滑なコミュニケーションをハイブリッドワーク環境でも取れるよう、最適な方法をチームで探ることが重要です。

関連記事:Veldhoen + Companyが現場で見た過去3年のハイブリッドワーク最新動向

ここで挙げたように、ハイブリッドワークとウェルビーイングは密接に関係しており、場所に縛られない働き方を上手に活用することでウェルビーイングな組織運営やワーカーの生活を実現することは可能でしょう。しかし、ハイブリッドワークにはまた特有の課題があります。どのようなアプローチをとるかで問題は長期化し、分散型ワークの弊害は大きくなってしまいかねません。組織にとっても個人にとっても有益なウェルビーイングな働き方とは何かを模索しながら、これからも私たちの気付きを共有していきたいと思います。

私たちはお客様と協力し、ワーカーの働き方が豊かになるスペースと人のつながりを通じて、組織の一員として誇りを持って働くことができる独自の文化と環境の構築をサポートします。