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データから見るABW・ハイブリッドワーク設計の出発点 ─ 働き方変革前の従業員サーベイ6,919件から見えた7つの傾向 ─

22 10月 2026

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【記事の要点】

  • ABWや本格的なハイブリッドワークに取り組んだ企業のプロジェクト開始前の従業員サーベイ(日本の回答6,919件)から、働き方を規定する順に7つの傾向を整理
  • 場所・時間の裁量は広く実感されていた一方、オフィス、IT環境、部門を越えた関わり方には改善の余地がみられた
  • そこからV+Cが設計上の問いとして何に着目したかを紹介し、自社の現状を捉える6問のチェック項目を提示

はじめに:変革に取り組んだ企業の出発点を振り返る

2026年、ハイブリッドワークの導入は、ひと段落したように思われます。出社や在宅勤務のルールが定まり、今は日々の運用に向き合っている担当者の方もいるでしょう。一方で出社回帰の動きもあり、自社に合う働き方とは何かをオフィスや仕事の進め方も含めて見直したいと感じる場面はないでしょうか。

ABWや本格的なハイブリッドワークに先行して取り組んだ企業は、プロジェクトの開始前にどのような状態だったのか。Veldhoen + Company(以下、V+C)が複数のプロジェクトで開始前に実施した従業員サーベイから、働き方の設計に効く7つの傾向と、そこから見える設計上の問いを整理します。

調査の概要

調査 V+Cがアジア太平洋地域でABWプロジェクトを担当した企業の従業員を対象とした「Hybrid Working Survey」(総回答数7,737件)

対象 このうち日本の企業の回答6,919件。回答企業はすべて製造業で、2020〜2022年のプロジェクト開始前に取得したデータです。

データの読み方 働き方変革への関心が高い企業のデータであり、日本企業全体を代表するものではありません。導入後の効果を示すものでもありません。海外ベンチマークは、読み解きの補助として参照しています。

 

1. 働き方を規定する順に見る7つの傾向

A. 仕事の中身

①個人作業が業務時間の半分以上を占め、活動に応じた場所の使い分けは少数派

1週間の業務時間のうち、集中作業・処理業務・一人で行う通話が58%、協働活動(共同作業、対話、創造、調整会議、情報共有など)が31%でした。

オフィスでの個人活動・協働活動について、「ほとんど/すべてを決まった1箇所で行い、他の場所はめったに使わない」が37%、「大部分を決まった1箇所で行うが、他の場所でも活動する」が48%でした。合わせて約85%が、1箇所を中心に働いています。活動によって場所を使い分けている人は、約15%にとどまりました。

図1 オフィスでの活動場所の使い方

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職種によって必要な活動は異なるため、注目すべきなのは集中や協働に応じた環境を選べているかという点です。「オフィスに来たからコラボレーションを」だけでなく、「オフィスにいるからこそ質の高い集中作業を」という人のニーズもあり、従業員が意識的にそのための空間を選べているかがポイントになります。

 

B. 裁量(自由度)

② 場所・時間を選ぶ裁量の実感は高かった

働く時間の裁量があると回答した人の割合は77%、働く場所の裁量があると回答した人は84%と、いずれも多くの人が上司から裁量を与えられていると感じていました(図2)。一方、職務を遂行するための意思決定権があると感じる割合は65%でした。

場所や時間を選べることと、仕事上の意思決定を任されていることは同じではありません。また個人の裁量があっても、チームで予定を調整したり、知識を共有したりする仕組みが自然に整うわけではありません。

図2  働く場所・時間に対する上司からの裁量 

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③ 希望するリモートワーク日数にはばらつきがあった

希望するリモートワーク日数に関する設問では、回答の平均が週2.9日でした。さらに特定の日数に大きな偏りがあったわけではなく、週4〜5日のリモートワークを望む人もいれば、原則オフィス勤務を望む人も一定数いました。参考に用いた海外ベンチマークでも平均希望日数はほぼ同じでしたが、週3日に回答が集中しており、平均が近くても希望の分布は異なっていました。

全社的に同じ出社日数を決めるアプローチではなく、個人の希望と、部門やチームでの最善の出社日数をすり合わせて最適なハイブリッドワークの検討が必要です。

C. 物理的環境とITテクノロジー

④ オフィスが提供する価値は十分に実感されていなかった

オフィスが与える価値について尋ねた設問に対し、「オフィスが生産性やコミュニティを支えている」という肯定的な回答の数はいずれも半数未満でした。出社したとき、どのような仕事が進めやすくなり、どのような人との接点が生まれるのか。オフィスの価値を問い直す必要性を感じさせる結果です。

⑤ 社外からの情報アクセスと、活用を支えるサポートには改善の余地があった

場所を選ぶ裁量を多くの人が実感していた一方、IT環境に関する設問でオフィス外から必要な情報にアクセスできるという肯定的な回答の割合は50%、研修やサポートについても37%にとどまりました。

勤務場所を選べても、必要な情報を得られない、ツールを使いこなす支援がないのであれば、柔軟な働き方の価値は限られます。業務上の情報管理やセキュリティ要件を踏まえながら、場所が変わっても仕事を進められる環境を整えることが重要です。

D. 人と文化

⑥ 知識共有の重要性を重視する一方関わり方の満足度は低い

知識共有が重要とする人は、自部門内で95%、他部門との関係でも89%に上ります。一方で自部門との関わり方に満足している人は60%、他部門との関わり方に満足している人は46%でした(図3)。一方知識共有の必要性は広く認識されながら、実際の関わり方、特に部門を越えた関係性には改善の余地があると捉えられます。

図3  知識共有の重要度と、人との関わり方の満足度 

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V+Cがこの結果から考えるのは、「人を同じオフィスに集めるだけで部門を越えた知識共有が進むのか?」という素朴な疑問です。必要な人や情報にたどり着く仕組み、他部門と話す機会の創出、共通の目的づくりなどソフト面の設計こそが重要になります。

⑦ コラボレーションの改善には組織文化の変化が求められていた

協働やコラボレーションの改善に必要な要素について聞いた設問では、改善に必要な要素として「組織文化の変化」が約51%と最多でした。一方、コラボレーションのプロセス改善は約28%、ツールのトレーニングは約19%でした。

参考に用いた海外ベンチマークでも組織文化の変化は重視されていましたが、今回の日本の回答では、プロセス改善やツールのトレーニングを選ぶ割合が相対的に低くなっていましたが、「ツールやプロセス上の問題はすでに整備されている」「別の課題を優先した」といった可能性も考えられます。

図4  コラボレーションの改善に必要な要素(回答者は最大3つまで選択可)

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参考に用いた海外ベンチマークでも組織文化の変化は重視されていましたが、今回の日本の回答では、プロセス改善やツールのトレーニングを選ぶ割合が相対的に低くなっていましたが、「ツールやプロセス上の問題はすでに整備されている」「別の課題を優先した」といった可能性も考えられます。

 

2. 調査結果からの問い:高い裁量と働く環境とのギャップ

7つの傾向を並べると、変革前からも場所・時間を選ぶ裁量があった一方で、部門を越えた関わり方やオフィス・IT環境に対する満足度は相対的に低いという構図見えます。また、個人作業が業務時間の半分以上を占めるなかで、オフィス内の環境を使い分けることも広く定着していたとは言えません。

これらは働き方を考えるための問いとして、次のように整理できます。

 

データ上の傾向

働き方の設計上の問い

活動

個人作業が58%。オフィスで場所を使い分けている人は約15%

活動ごとに必要な環境は何か。今、それを選べているか

裁量・自由度

場所84%・時間77%が裁量を実感。希望日数は平均2.9日でも、ばらつきがある

日数ではなく、活動と目的から「集まる意味」をどう設定するか

場所

オフィスが生産性・コミュニティを支えるという肯定は、いずれも半数未満

出社するとどんなタスクが進めやすくなるのか

IT

オフィス外からの情報アクセス50%、研修・サポート37%

場所と時間の裁量を、IT環境は支援できているか

人・文化

他部門との関わり方に満足する人は46%。コラボ改善の要素は文化の変化が51%で最多

文化への要望をどの行動・仕組みの変更に落とすか。オフィス変更だけで十分だろうか

 

 

3. V+Cとして考える、これからの働き方への3つのインサイト

1.「出社日数」の前に「活動」から設計する

希望するリモートワーク日数の平均は週2.9日でも、その希望にはばらつきがあり、オフィスが生産性やコミュニティを支えると感じる人も半数未満でした。日数を決めるだけでは、こうした状況への対応は十分ではありません。

まず考えるべきなのは、成果を生むために必要な活動の設計と、その活動を支える環境です。まず、一人で集中する時間、他者と考える時間、経験を共有する時間といった成果に必要な活動とそれを支える環境を整理します。その上で、チームで集まる目的や機会を設計し、その結果として、勤務場所や頻度を考えることができます。

V+Cは、オフィスを、知識を交換し、学び、関係をつくり、共に考える活動を支える場所として捉えています。出社日数の前に、出社とは何の活動を誰と行うためにするのかを明確にし、オフィス空間の整備と使い方を一緒に考えます。

2. 個人の裁量はチームで連携する仕組みと一緒に整える

今回の分析結果では、場所・時間の裁量を多くの人が実感する一方、他部門との関わり方への満足度は半数未満でした。個人が選べることに加え、互いの働き方を理解し、調整する仕組みが必要です。

連絡可能な時間、相談の方法、情報を残す場所、対面で集まる目的などをチームで話し合うことは、その具体例です。マネージャーには、期待する成果を明確にし、離れて働く人を支援する役割が求められます。

3. 意識への働きかけとともに、文化を行動と仕組みに分解する

知識共有を重要だと思っていても、相談先が分からない、他部門と話す時間がない、必要な情報にアクセスできないといった状況では、行動に移しにくくなります。「もっと協働しよう」と呼びかけることに加え、協働しやすい条件を整える必要があります。

会議の運営、情報の共有方法、役割分担、マネジメント、空間の使い方などを具体的に見直す。そうした行動と仕組みの変化を積み重ねることが、組織文化を変えていく道筋になると考えます。


 

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4. まとめ:変革前の姿を今の自社に重ねてみる

本調査の数値は、2026年の標準値や自社が達成すべき目標値ではありません。働き方変革への関心が高かった企業のプロジェクト開始前の状態を示しています。変革前のデータから見える課題を、ご自身の従業員の声や日々の業務に照らしてみてください。最新の実態を示す資料ではありませんが、自社の働き方を振り返り、次の選択を考える出発点となります。

次の6問に、「はい」「いいえ」で答えてみてください。

□  仕事の活動(集中、協働など)に応じて使い分けられる場所があり、従業員が意識して選べている

□  場所・時間を選べることと、これまで通りの仕事を進めやすいことを、同じものとして捉えていない

□  出社日数を、平均値ではなく、部門・職種・活動ごとの事情を踏まえて検討している

□  出社したときにどの仕事が進めやすくなるのかを、従業員が実感している

□  社外からでも必要な情報にアクセスでき、ツールを使いこなす支援がある

□  「協働やコラボレーションが大切」と伝えるだけでなく、他部門と話す機会や、必要な人・情報にたどり着く仕組みがある

「いいえ」が付いた項目は、まず現状を確かめる候補になります。今の従業員の声や日々の業務に照らして確認してみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. この調査から、ABWを導入すると何が改善するか分かりますか?

A. 本記事で扱うのはプロジェクト開始前のデータであり、導入後の改善や施策の効果は示していません。変革に取り組んだ企業が当時どのような状態にあり、働き方の設計で何を検討する必要があったかを捉える資料です。

Q. この結果は、他の企業にも当てはまりますか?

A. 対象は、すでに働き方変革に強い関心を持っていた企業であり、日本の企業全体を代表するものではありません。職種ごとの内訳も示していないため、すべての職種にそのまま当てはめることはできません。自社の業務や働く条件に照らして読む必要があります。

Q. ABWや働き方戦略の構築を始める際、何から確認すべきですか?

A. まずは、どのような活動に時間を使い、その活動を進めるうえで何が支障となっているかを確かめます。場所・時間を選ぶ裁量だけでなく、チーム内外の関わり方、オフィス環境、情報アクセスやITの活用支援も併せて確認することが、設計の出発点になります。

Q. 従業員の希望するリモートワーク日数の平均に合わせて、出社日数を決めればよいのでしょうか?

A. 希望日数の平均は、最適な勤務日数を示すものではありません。同じ平均でも、個々の希望には違いがあります。部門や職種ごとの業務、チームで集まる目的、現場との連携などを確認したうえで、働く場所や頻度を考える必要があります。

Q. 海外ベンチマークは、何のために用いていますか?

A. アジア太平洋地域を中心に集めた海外ベンチマークを、当時の回答を読み解く補助的な材料として用いています。企業や回答者の構成が異なるため、国別の優劣や、日本企業の標準を示す比較ではありません 。

私たちはお客様と協力し、ワーカーの働き方が豊かになるスペースと人のつながりを通じて、組織の一員として誇りを持って働くことができる独自の文化と環境の構築をサポートします。