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在宅勤務を好む日本のハイブリッドワーク:オフィス出社を促す時に注意したいこと

16 5月 2022

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ハイブリッドワークをテーマに開催した4月13日のウェビナーは、参加者の方より大変なご好評をいただきました。特にオーストラリアという国外の情報に対し「自社の参考になる」というお声を多くいただけたことは弊社としても大きな学びとなりました。今回は、ウェビナーが無事に終了した報告を兼ねて、ウェビナ―のトピックの1つ、「データから見る日本のハイブリッドワークで注意すべきこと」の内容をご紹介します。

*ウェビナーで触れた全内容や後述の内容詳細はホワイトペーパーにまとめられています。ご興味のある方はこちらよりご覧ください。

 

オーストラリアの事例が日本の参考になる3つの理由

今回国外の事例を取り上げた最大の理由は、そもそも日本国内における本格的なハイブリッドワークの事例がまだ限られていると考えたためです。ではなぜオーストラリアの情報なのか。私たちが注目した具体的な理由は3つあります。

  • オーストラリアは2020年からのパンデミック下で感染者数を抑制し、早期のオフィス復帰とハイブリッドワークの実施が可能だった
  • パンデミック下のオーストラリアでも日本同様にオフィス出社型の企業が多く、ハイブリッドワークへの対応に苦労する企業が多かった(=オーストラリアも一からハイブリッドワーク戦略を模索してきた)
  • 「活動」という観点から働き方を分析した時、自宅で行う活動とオフィスで行う活動の特徴が日本と似ている

結局のところ、オーストラリアでも日本と同様に多くの企業がパンデミックの影響で早急なハイブリッドワーク対応を余儀なくされていたのです。だからこそ、Veldhoen + Companyのオーストラリアチームが1,500人のハイブリッドワーカーを対象に実施した調査の結果や彼らの知見はこれからハイブリッドワークに移行する日本の組織にも応用できると考えました。

 

データから紐解く日本のハイブリッドワークの傾向

では、オーストラリアのデータから何が見えてきたのでしょうか。また日本のデータ*と比較した時に、日本にはどのような傾向や特徴があるのでしょうか。2つのポイントから整理します。

*日本のデータは、パンデミックが始まった2019年から2022年4月にかけて、日本のワーカー7,000人以上を対象にVeldhoen + Companyが実施したサーベイの結果をもとにしています。

 

1. リモートワーク希望日数:日本はリモートワーク希望日数が高い

1つ目はリモートワーク希望日数です。下記のグラフはサーベイを通じて得られた、パンデミック下のオーストラリアにおけるリモートワーク希望日数の割合を表しています(ホワイトペーパーより)。週2日以上を希望する人の割合が80%と高いことが見て取れます。

これと同様に日本チームで収集したデータを比較したところ、いくつか特徴が見えてきました。

まず、リモートワークを週2日以上希望した回答者の割合は日本でも同じく80%以上と高いことがわかりました。さらに、週3日以上の割合を見てみると、オーストラリアの約46%に対し、日本はそれよりも20ポイントほど高い64%という結果でした。つまり、日本のデータ単独で見ても週の半分以上をリモート(在宅勤務)で働きたいと考えているワーカーが過半数と多いことがわかりました。またオーストラリアでも多くの企業がハイブリッドワークに移行していることを考慮すれば、日本でもハイブリッドワークを主軸に置いた戦略を検討することは主流になるだろうと思われます。

また、このリモートワークを希望する声が強いという傾向を鑑みると、日本のハイブリッドワークには2つの点に注意する必要があります。

1つは、従業員に特定の日数や曜日に出社するよう会社から義務づけるようなことがあると彼らの大きな反発を引き起こす可能性があることです。ホワイトペーパーでは、オーストラリアの企業が従業員の出社する頻度を企業が決定する「出社志向」のアプローチを取ったところ、根拠のない日数設定に従業員が反発し、社内の混乱を招いた事例についてご紹介しました。リモートワーク希望の声が強い日本で同じようなアプローチを取ってしまうと、より大きな反発が起きるかもしれません。緊急事態宣言下のリモートワークによって柔軟な働き方を経験した従業員に対し出社を促す場合には、慎重な対策を取る必要があります。

2つ目は、従業員が自ら「オフィスに来たい」と思えるようになるためには、出社することに対する強力な動機づけが必要になることです。ホワイトペーパーでは、先述の「出社志向」よりも、従業員が自身の業務に応じて自由に出社するタイミングを選べる「選択肢志向」のアプローチの方が戦略として長期的に機能することをご紹介しました。それを前提としてワーカーが在宅勤務よりもオフィス出社を選ぶようになるためには、オフィスに来ることの価値や目的が明確にされていること、またリモートワークでは得られない体験をオフィスが提供できるように機能を備えることが重要になると考えられます。

 

2. 活動ごとの最適な場所:日本のオフィスに求められるのは二人作業やアイデア出しを行うための環境

2つ目に注目するポイントは、仕事を行うのに最適とされる場所についてです。下記のグラフはVeldhoen + Companyが定義した一般的なワーカーが行う「10の活動」に基づき、各活動を行う最適な場所(オフィス、自宅、その他)について調査した結果を表しています。

その結果、オーストラリアで「オフィスで行うべき活動」として挙げられたのは、アイデア出しや交流、対話や二人作業など、他人との自由な交流が図れる活動や偶発的な出会い・発見に頼る必要がある活動、また少人数のコラボレーションでした。

これと同様の傾向が日本のデータでも見られます。となると、今後オフィスに必要とされる機能は、このようなコラボレーション活動をサポートできるようなしつらえであると見ることができます。

しかしオーストラリアとの違いとして、日本では情報整理や情報共有、対話といった「相談・調整」を伴うコラボレーション活動はオフィスよりもリモートワークで実施したいという割合が上回っていることがわかりました。つまり、ひとえにコラボレーション活動すべてをオフィスで行いたいのではなく、二人作業やアイデア出しなど、資料を集中的に整理したり積極的な意見交換を行ったりするグループワークを特にオフィスで行いたい傾向があるということです。これも日本のハイブリッドワークの特徴として押さえておきたいポイントです。

これにはいくつかの要因が考えられます。その1つは、日本は会議の時間や数が多い、また自分の寄与の度合いが低い会議が多く「リモートで十分」という意識が働いている可能性がある、という点です。その場合、ハイブリッドワークを戦略として本格的に導入する時には、同時にコラボレーションの質と量を見直すことも重要でしょう。以下のような質問を自社で見つめ直してみると良いかもしれません。

  • 無駄な会議はないか?必要以上のメンバーを招集していないか?
  • 対面でオープンに話せるような心理的安全性は確保されているか?
  • オンライン会議やハイブリッドでのコラボレーションの質を高めるスキルは身についているか?

これからのオフィスに必要な5つの要素

ここまで述べた通り、これからのオフィスはリモートでも仕事できることを考慮し、特定の活動をよりサポートできるよう機能を備えることが求められます。特に「オフィスで行うべき活動」に対する考え方は企業によって異なります。そのためハイブリッドワーク戦略やオフィスを考える上で、まずは「活動」という視点で自社の働き方を見直すことから始めることをお勧めします。

そのほか「活動」以外にも、働き方やオフィス構築で考えるべきポイントはいくつも存在します。それらの考慮すべきポイントを整理し、ハイブリッドワーク下のオフィスに重要な要素としてオーストラリアチームがまとめたものが下記の5つになります。各要素の考え方が企業によって千差万別であることを踏まえると、オフィスづくりやハイブリッドワーク戦略構築において「One-size-fits-all(すべての企業に当てはまる1つのアプローチ)」はないことが窺えます。

 

今後の動向:働く「場所」だけでなく「時間」にも柔軟性が求められる

ハイブリッドワークには様々な注意点があり複合的な判断が求められますが、最も重要なのはワーカーがリモートワークで経験した柔軟性をいかに戦略に組み込めるか、だと考えます。言い換えると、適切なワークライフバランスを維持できる環境を整えられるかということです。その点で言うと、先に述べた「働く場所」だけでなく、「働く時間」もワーカーが自律的に選べる働き方に欠かせない視点でしょう。

実際に、週休3日制の働き方を取り入れる企業が昨今増えているのも時間の柔軟性に対する社会的傾向の1つです。みずほファイナンシャルグループやNEC、ヤフー、ファーストリテイリングなど様々な業界で、従業員が自分の働く時間を調整し週休3日を選択できるようになっています。それに加えて、先日発表されたパナソニックホールディングスや日立製作所の取り組みも多くの注目を集めています。

この取組みの根底には人材確保や生産性向上等の様々な経営的理由があるでしょう。それを実現する方法として、従業員にそれぞれ理想とする働き方を前向きに選択できる柔軟な環境を用意し、「働く」ことに対する体験価値を自律的に高められるようにすることが大切という考え方が軸にあるように思われます。組織としてビジネス活動を続ける上で、働く場所や時間に縛られない環境が当然となる時代に近づきつつあります。

ハイブリッドワークは今も多くの企業や組織で試行錯誤を繰り返しながら導入・実践が進んでいます。グローバルで活動するVeldhoen + Companyだからこその情報を今後も積極的に発信していきます。今回の内容にご興味のある方やハイブリッドワークに関してご質問のある方は、お気軽に問い合わせページよりお問合せください。

Veldhoen + Company
ワークスタイルコンサルタント 生駒一将

私たちはお客様と協力し、ワーカーの働き方が豊かになるスペースと人のつながりを通じて、組織の一員として誇りを持って働くことができる独自の文化と環境の構築をサポートします。