本記事はザイマックス総研オンラインによるIolanda Meehanのインタビュー記事を転載したものです。

ABW成功のために「新時代のリーダーシップ」が果たす役割

Iolanda Meehan/アジア地区統括マネージャー、Veldhoen + Company

ABW(Activity Based Working)の概念を生み出したオランダのコンサルティング会社Veldhoen + Companyで、アジア企業の組織や経営戦略を長年みてきたヨランダ・ミーハン氏は、日本企業の組織やワークプレイスについてどのようにみているのでしょうか。

前編ではABWの基本的な考え方やワークプレイス変革の必要性、リーダーシップの重要性についてご紹介しました。後編では、ABWにおいて求められる具体的なリーダーシップスキルや、中でも特に重要だという「信頼」とABWの関係について伺います。

記事前編:ABWは「裁量さえ与えられれば人は最善の仕事をする」と信じることから始まる

ABWにおいて求められるリーダーの6つのスキル

リーダーシップの定義については様々な解釈があります。当社でも調査などを通じて、リーダーに必要なスキル特に、ABWコンセプトのもと、固定席を持たずリモートで働くメンバーをマネジメントする場合に、どのようなスキルが必要になるのかを研究してきました。ABWにおいて必要なリーダーシップスキルは主に6つです。

1)意思決定

ABWにおいては、今までマネジャー層だけが担ってきた意思決定を、本当にマネジャーがすべて行うべきなのか見極めるスキルも必要となるでしょう。あるいは、分権化し、メンバーを触発し、権限移譲するという判断もありえます。

2)信頼

チームや同僚との信頼構築は、指示されたり研修を受けたりしてできるものではありません。リーダーはこのことを理解し、何ヶ月も、時には何年もかけてチーム内の信頼を勝ち取っていく必要があります。他のどのスキルより、これが最も難しいかもしれません。

3)チームの絆の形成

仕事でも仕事外でもチームの絆を育むことは、ABWにおけるリーダーの新しい役割となります。かつては毎日顔をあわせ、隣の席で働いているうちに自然と醸成されたチームの絆を、リモートで働くメンバーにどうやって感じてもらうのか。当たり前に醸成されるものでは決してないから、リーダーが意識して取り組む必要があります。

4)成果へのフォーカス

ABWでは成果を測定することが重要になります。部下が目の前にいなくても「成果を出しているはず」と信頼するためです。優秀な営業マンはいつも顧客先を回っていてオフィスにいないけれど、売り上げベースでマネジメントできるから上司は信頼しやすいですよね。人事や財務、マーケティング部門も同様にできないでしょうか。リーダーは、部下が目の前にいるか否かではなく、成果によって部下を信頼する必要があります。

5)コラボレーション

近年、チームや部門の壁を超えたコラボレーションの重要性が注目されていますが、チーム内のコラボレーションを促進するのはリーダーの重要な役割です。コラボレーションを通じてチームを成長させることができます。

6)知見の共有

メンバーが目の前にいる環境では、知見の共有は簡単でしたが、新しい働き方においてはリーダーがそのための時間を意識的に割く必要があります。

日本での意思決定において「信頼」が重要な理由

これらのリーダーシップスキルの中で、最も難しいものの一つが信頼です。マネジャー層であれば、成果を出して組織に認めさせるためには部下に頼らざるをえません。部下からの信頼を得るだけでなく、自分も部下を信頼して権限移譲し、自身の成果や評価といった大切なものを損なわれるかもしれないリスクをとりながら、部下の行動や行為に依存することになります。

さらに日本においては、信頼構築のスキルは重要な意味を持ちます。日本は意思決定に関して、世界でも特殊なカルチャーを持つためです。

日本企業は権力に対して階層的なアプローチをとっていて、欧米などの国に比べリーダーが権威的であるという特徴があります。一方で、日本における意思決定はリーダー一人がトップダウンで行うというより、チーム全体の合意に基づいて行われる傾向があります。階層的なリーダーシップスタイルを持ちながら、リーダーはメンバーの合意なしに前進できない。そこで機能するのが信頼です。「権威」と「合意」を上手くコンビネーションさせるためには、リーダーとメンバーが互いを信頼する必要があるのです。

おわりに

企業経営においては「組織文化(社風)」「ビジネス戦略」「働き方」「ブランド」という4つの領域を乖離なく合致させることが重要ですが、そのための有効な手段が戦略的なワークプレイス環境の整備です。

日本のオフィスワーカーは大半がデスクワークに従事していて、1日の労働時間も世界平均と比べて長いといわれているにもかかわらず、人口密度の高い効率追求型のオフィスが長らく主流でした。そのようなオフィスで働くことは、組織へのエンゲージメント低下という反動をもたらします。

「エンゲージメントという概念は欧米のもの、日本企業には関係ない」と考える方もいるかもしれません。しかしエンゲージメントという概念は、会社に対する好感やビジョンへの協調、事業への貢献意欲といった要素に分解できるものです。従業員がこれらの要素について否定的であることが、日本の企業にとっても望ましくないのは間違いないでしょう。

ABWコンセプトに基づいたワークプレイス戦略を講じることで、ワーカー個人のエンゲージメントを高めるだけでなく、企業経営にとっても好ましい状況を生み出すことが期待できます。そして、ABWを成功裏に実現させるために、リーダーシップの果たす役割が大きいということをお話ししました。

ABWはオランダやスウェーデンなど、それほど階層的でない組織文化において発展してきました。日本の文化はこれとは少し異なりますが、その差異を障壁ととらえるのではなく、リーダーシップに対するアプローチに違いがあると認識することが重要です。オランダのやり方を踏襲するのではなく、日本の、それぞれの企業文化に即した形で、リーダーシップを育成するには何が必要なのかを考えてみてください。そうして獲得したリーダーシップが、ABWを実現するうえでの力強い車輪となってくれるはずです。

Iolanda Meehan(ヨランダ・ミーハン)/Veldhoen + Company アジア地区統括マネジャーPwC、Philips、Haworthで経営コンサルタントなどを経験。現在はVeldhoen + Companyのアジア地区統括マネジャーとして企業に対し、Activity Based Workingに基づく新たな働き方を提唱している。

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