本記事はザイマックス総研オンラインによるIolanda Meehanのインタビュー記事を転載したものです。

ABWは「裁量さえ与えられれば人は最善の仕事をする」と信じることから始まる

Iolanda Meehan/アジア統括マネージャー、Veldhoen + Company

多くの日本企業が働き方改革に取り組む中、オランダで生まれた「ABW」という概念が注目されています。「Activity Based Working」の略で、業務内容(Activity)にあわせて働く場所を選択する、時間や場所に縛られない新しい働き方を示す言葉です。

このABWの概念を30年前に生み出したオランダのコンサルティング会社Veldhoen + Companyで、アジア地区統括マネジャーを務めるヨランダ・ミーハン氏に、日本社会における組織の在り方やワークプレイス変革をテーマにお話を伺いました。

前編ではABWの基本的な概念やワークプレイス変革の必要性、ABWにおけるリーダーシップの重要性などについてご紹介します。

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ワーカーに最善の仕事をしてもらうためのアプローチ

当社の創設者がABWのコンセプトを生み出した1990年頃、オランダ都市部で働く人々は人口密度の高さと交通渋滞に悩まされていました。ただ、テクノロジーがオフィスワークの在り方に影響を与え始めた時期でもあり、彼はこれをチャンスと捉えた。「とにかくオフィスに行かねばならない」ではなく「オフィスに行けば素晴らしいことが起きる」と思えるよう、ワーカーの活動がしっかりサポートされていれば、仕事はもっとよいものになると考えたのです。そのためのアプローチがABWです。

ABWとは、「働く場所・時間・相手を自由に選ぶ権限さえ与えられれば、人やチームは最善の仕事をする」と信じ、そのために個人やチームの裁量を最大化するというアプローチです。ですから、あらゆる組織に適応できるABWの公式はないし、ABWのプランやソリューションを売ってくれと言われてもできません。オフィスのレイアウトをフリーアドレスにすれば良いということではなく、自由に選択する権限と選択肢を与えるということです。

発想はオフィスも住宅も同じ

ワークプレイスに落とし込む際も、自社内でどんな活動が行われているのかを明確にし、ユーザーはその環境の設計意図を理解する必要があります。住宅にあてはめるとわかりやすいかもしれません。皆さん、歯磨きは洗面所で、睡眠はベッドで、調理はキッチンで行いますよね。住宅の設計意図を理解しているから、寝室で食事はしません。自宅にいるときは自然とそれぞれの活動を、そのために準備された適切な環境で行っています。

それでいて、世界中に同じ家は二つとして存在しません。そこに住む人々は生活習慣もライフステージも嗜好も異なるからです。家族構成、趣味、仕事の種類などによって活動が変わり、そのために適切な環境も違ってきます。子どもがいれば子ども部屋のある家、料理好きならキッチンの広い家に住むでしょう。そして活動に基づいた生活を容易に実現しています。

それが仕事になると何故、個々の活動が適切にサポートされない画一的な環境で働いているのか。その理由の一端は、学校教育にあるのではないかと考えています。

私たちは初等教育の始まる5、6歳頃から小さな机をあてがわれ、そこに座って国語も、物理も、図工も、すべての授業に取り組む学校生活を長年続けます。幼少期から「真面目に取り組むこと=机に座ってやる」という生活に慣れ、そのまま就職した人々が、仕事は机ないし会議室でやるもの、それ以外は真面目とみなされないと思い込んでいるのではないでしょうか。

10種類の仕事をすべて机でこなす現代ナレッジワーカー

ただ、これで対応できたのは、やるべき仕事が2種類くらいだった頃まで。押印や署名、あとは多少のパソコン作業くらいでしょうか。一方、今日のナレッジワーカーは週に平均10種類の仕事をこなしています。ざっと分類すると、集中作業、業務処理、電話、2人作業、対話、創造的な作業、情報整理、情報共有、リラックス、技術的な作業など。これらをワーカー一人ひとりが行います。マネジメント層はさらに複雑な仕事を担っているでしょう。それをすべて一つのデスクでこなそうとするのは無意味なことです。

これらの幅広い活動を支えるためには、それぞれに適応した環境を用意する必要があります。まず、しっかりと集中できる環境。機密保持に適した環境。チームワークを発揮できる環境、その場合も多人数と少人数では必要なファシリティが違うでしょう。それからリラックスできる環境。

リラックスを仕事の活動であると捉える人は少ないけれど、脳を休める時間なしに8時間以上も知的労働をし続けるのは無理です。私たちは機械ではないのだから、リラックスは非常に重要な仕事のための活動であるといえます。

ABWはワーカーの活動を基本としたアプローチですが、それを支えるのはテクノロジーや行動理念の共有です。「仕事の一環としてリラックスすべき」といった理念を共有し、ABWを上手く機能させるためには、社員と組織が互いに信頼し合う必要があります。ABWは信頼なくして機能しえないコンセプトなのです。

新しい時代のリーダーシップ

ここでリーダーシップについて触れておきます。何故なら、ワークプレイスの変革はリーダーシップなくして起こりえないからです。ABWを組織に取り入れるにあたり、リーダーシップは大きな車輪であり、それが大きくて回転が速いほど、人々がABWを受け入れやすくなると考えてください。

では、リーダーシップとは何か。チームの面倒を見ること?チームが最善を尽くせるよう支えること?もしくは「権威である」と答える人もいるもしれません。個人的には決して権威ではないと思いますが、解釈は様々でしょう。

モチベーションコーチ、インフルエンサーなど様々な呼称を持つサイモン・シネック氏は、「もし、あなたの行動が他者を触発し、彼らのよりよい夢や目標、学びを促しているならば、あなたはリーダーなのだ」と語っています。つまり、他人を触発する力こそがリーダーシップであるという定義です。

前編はここまで。後編では、ABWにおいて求められる6つのリーダーシップスキルや、中でも特に重要だという「信頼」とABWとの関係についてご紹介します。

Iolanda Meehan(ヨランダ・ミーハン)/Veldhoen + Company アジア地区統括マネジャーPwC、Philips、Haworthで経営コンサルタントなどを経験。現在はVeldhoen + Companyのアジア地区統括マネジャーとして企業に対し、Activity Based Workingに基づく新たな働き方を提唱している。

詳しい内容ついて知りたい方は 担当者までお問い合わせください

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