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行政に“柔軟性”という選択肢を─ドイツ・デュッセルドルフ市と取り組む「未来志向の庁舎づくり」

9 5月 2025

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Copy of V+C City of Dusselforf Copy of V+C City of Dusselforf

Veldhoen + Companyでは、これまで共に働き方改革を進めてきたお客様にインタビューを行い、プロジェクトの背景やそこから得られた学びを伺っています。

今回は、ドイツ・デュッセルドルフ市が推進する「新技術行政庁舎(TVG)プロジェクト」に焦点を当てます。TVGは約3,000人が勤務予定の次世代型庁舎であり、アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)を取り入れた、柔軟でダイナミックな働き方を体現する場として構想されています。

お話を伺ったのは、公共行政の現場で豊富な経験を持つクリスティアーネ・コアーズ氏とシュテファニー・フーフェンシュトゥール氏。両氏はこのプロジェクトにおけるコンセプト設計やチェンジマネジメントをリードしており、ワークプレイスのあり方に革新をもたらしています。

2018年よりプロジェクトを統括しているコアーズ氏と、デュッセルドルフ市議会で約20年勤務し2020年からプロジェクトに加わったフーフェンシュトゥール氏は、行政における働き方の進化を牽引する存在です。

本記事では、デュッセルドルフ市のビジョンに沿った持続可能で革新的なワークスペースづくりがどのように進められているのか、またその実現に向けたVeldhoen + Companyの関わりとは何かを紹介します。

V+C:Veldhoen + Companyと共に取り組んできた内容について簡単に教えてください。

デュッセルドルフ市: Veldhoen + Companyは2019年から私たちデュッセルドルフ市の「新しい働き方」導入を継続的に支援してくれています。中でも、アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)の導入は大きな柱のひとつです。

主な支援内容は、以下の通りです。

  • ABW導入の支援
  • チェンジマネジメントのコンセプト開発
  • ステークホルダーの特定
  • ワークショップやインタビューなどを通じた、関係者ごとの効果的なコミュニケーション設計

また、Veldhoen + Companyは、チェンジマネジメントチームとオフィス構築チームの間をつなぐ重要な“架け橋”としての役割も担ってくれました。

私たちの変革チームは、Veldhoen + Companyとともに、ワークプレイス環境のコンセプト設計に取り組む組織横断型の支援チームとして活動しています。

V+C:Veldhoen + Companyが解決を支援した課題は何でしたか?

デュッセルドルフ市:私たちは現在、約3,000名の職員を対象に何十年ぶりとなる新庁舎の建設という大規模なプロジェクトに取り組んでいます。この新庁舎では、従来の固定席型オフィスをやめ、新しい働き方への全面的な移行を目指しています。  

この変化に向けた最大の課題は、職員がスムーズに適応できるよう、どのように準備を進め、どのように意識を醸成していくかという点です。そして、2031年の移転予定日までの長い期間をいかに有意義な変革プロセスとして活用できるかが問われています。  

チェンジマネジメントの目標は、職員が新庁舎と新しい働き方に対して納得感と期待を持てるようにすること。そのために、移行期間を単なる待機期間とせず、学びや意識改革の時間として位置づけています。

私たちは、行政組織における「新しい働き方」や変革プロセスの先駆者的な存在となることを目指しています。しかしその分、プロジェクトの設計や主要ステークホルダーの巻き込み方には、より高度な戦略性が求められます。

ABWの導入・定着には、制度や設備だけでなく、職員一人ひとりのマインドセットを根本から変えていく必要があります。

V+C:V+Cのコンサルティングは、デュッセルドルフ市の働き方のビジョンにどのような影響を与えましたか?

デュッセルドルフ市:オランダとの地理的な近さもあり、フェンロー市やユートリヒト市で進んでいた「新しい働き方」の潮流が、私たちのあるノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州にも届き始めていました。

当時の市長と庁舎管理部門がフェンロー市と接点を持ったことで、Veldhoen + Companyのコンサルタントとつながるきっかけが生まれました。

V+Cとの対話を通じて得た大きな学びのひとつは、「特定のモデルや考え方を一方的に導入するのではなく、まずは自分たちの組織文化やマネジメントスタイルに気づきをもたらすことの大切さ」です。

また、変革を「一部の取り組み」としてではなく、組織全体で本格的に推進していく体制を整えるという決断もV+Cからの専門的な助言によって後押しされました。チェンジマネジメントを専任チーム主導で進めることにしたのもその影響です。

庁舎の完成まではまだ時間がありますが、すでに職員の間ではビジョンへの理解と関心が芽生え始めています。たとえば、以下のような問いを自発的に投げかける職員が増えてきました。

  • 「デスクシェアって実際どういうこと?」
  • 「どの業務プロセスを見直す必要があるんだろう?」
  • 「新しい働き方を今、このタイミングで導入する意義は何なのか?」

こうした意識の変化により、まだ新庁舎が完成していないにもかかわらず、一部の部門からは「先行して変化を始めたい」という声が上がり、私たちチェンジチームへの相談が自発的に寄せられるようになっています。

V+C:Veldhoen + Companyのアプローチや手法の中で、このプロジェクトの成功に最も大きな影響を与えたのはどの点ですか?

デュッセルドルフ市: 行政組織の特徴として、同じ部門内でのやりとりは頻繁にありますが、部門を越えた連携や対話は極めて限定的です。

そのような中で、Veldhoen + Companyが実践してくれたのは「ステークホルダー一人ひとりと丁寧に対話し、理解を深めるアプローチ」でした。さらに、それぞれの目的に合った適切なデータ収集手法を組み合わせることで、私たちの組織に非常に前向きな変化をもたらしてくれました。

 
"最も大きな成果は、これまで困難だった「関係者同士が率直に話し合う場」を実現できたことです。

これは長年、行政組織の課題でもありました。"  

Veldhoen + Companyとの継続的なパートナーシップによって、今では部門間の壁も少しずつ取り払われ組織内の対話が生まれ始めています。

プロジェクト初期のころは「それはオランダだからできたこと。私たちには無理だよ」といった声も多く聞かれましたが、今ではそうした意見もほとんど耳にしなくなりました。

Veldhoen + Companyがデュッセルドルフ市の職員一人ひとりに偏見なく、対等に向き合ってくれたこと。それが信頼を生み、職員からも自然とポジティブな評価を得られるようになっているのです。

V+C:Veldhoen + Companyが他のコンサルティング会社と異なる点はどこにあると感じますか?

デュッセルドルフ市:Veldhoen + Companyはリラックスした雰囲気の中で、開かれた対話姿勢と深い理解をもって私たちと関わってくれます。このスタンスこそが他のコンサルティング会社とは一線を画す特徴だと感じています。  

"V+Cは、新しい働き方の分野で数十年にわたるグローバルな知見を積んでおり、その専門性は他社と比べても際立っています。

他にもワークプレイスに関するコンサルティング会社は存在しますが、Veldhoen + Companyが市場の中で際立っている理由は、パートナーシップを軸にしたアプローチとニッチかつ高度な専門性です。"

V+Cとの協働はいつもスムーズで、創造的かつ革新的。刺激に満ちたプロセスであり、共に進めていて楽しく、学びも多いと感じています。

また、V+Cは常に建設的な姿勢で対話に臨んでくれます。私たち行政の立場からの意見や視点もしっかりと受け止め、丁寧に尊重してくれる点がとても信頼できます。

V+C:Veldhoen + Companyが「ワークプレイスの変革」に果たした最大の貢献は、どのような点だと思いますか?

デュッセルドルフ市:一番大きな貢献は「変化に向かうモチベーションを与えてくれたこと」だと思います。V+Cはプロジェクトに関わるメンバーに対して、これまでとは異なる視点で物事を考えるきっかけを与えてくれました。

さらに、どのような状況であってもオープンな姿勢を貫き、常に前向きに関わってくれる点も大きな魅力です。V+Cはすべてのプロジェクトに真摯に向き合い、独自のアプローチと全力のコミットメントで応えてくれます。

そして何よりも、パートナーが目指すゴールにぴったりと合った「オーダーメイドの解決策」を見つけ出す力に長けているのです。

V+C:今後、Veldhoen + Companyが「働き方の未来」において果たすべき役割や可能性について、どのようにお考えですか?

デュッセルドルフ市:現在私たちがV+Cと取り組んでいるプロジェクト自体がすでに「行政組織の未来のかたち」だと感じています。これからの働き方は、よりスピーディーに、柔軟に、そして自律的な方向へと進んでいくことでしょう。

しかし行政の世界では、依然として伝統的で硬直的なアプローチが主流です。「これまでもこうやってきたから」という発想が根深く、既存の仕組みや慣れ親しんだ方法が“安心”とされる風土があります。

さらに、行政組織は法律に基づき運営されており、連邦や州の厳格なガイドラインに従う必要があります。市長(=行政のトップ)も選挙で選ばれる立場である以上、再選を意識した判断が避けられず、それは予算配分や意思決定プロセスにも大きく影響します。

そのため、組織としては「安定性の確保」を重視する傾向が強く、柔軟性や革新性といった要素は、任意の取り組みや内部の限られた領域にとどまりがちです。

そうした中で私たちが進めているV+Cとの取り組みは、行政としては非常に革新的であり、未来に対応したモデルだと自信を持っています。この流れを今後も止めることなく、さらに前進させていきたいと考えています。

AIやデジタル化の進展によって、今後は定型業務の多くが自動化されていくでしょう。その分、人が担うべき仕事はより迅速で柔軟、そして価値の高いものへと進化していくはずです。

V+C:働き方改革を検討している他の組織に、V+Cとの協働をおすすめしたい理由は何ですか?

デュッセルドルフ市:V+Cは、組織の構造や文化の複雑さを非常にスピーディーかつ的確に理解してくれます。それも業務面に限らず、「人」の側面まで含めて丁寧に捉えてくれるのが特長です。

チームは常にオープンで、柔軟かつ理解のある姿勢で関わってくれます。

加えて、創造性と革新性を持ち寄りながら対話ができるため、協働はいつも建設的で刺激的。そして何より、常に対等な目線で向き合ってくれるので、安心感があります。

 

V+C:最後に、Veldhoen + Companyのチームへ伝えたいメッセージがあればお願いします。

デュッセルドルフ市:これからも、新しいことに対してオープンで偏見のない姿勢を貫いてください。

そして、V+Cの持つマインドセットと「やってみよう!」という前向きな文化を、もっと広めてほしいと思います。特にドイツのワークプレイス文化には、この価値観が必要とされていて、何よりも楽しくもあるのです。

V+C:V+Cとの協働が、あなたたちの「働く世界」に与えた影響を、ひと言で表すと?

「刺激的(Inspiring)」ではないでしょうか。

私たちはお客様と協力し、ワーカーの働き方が豊かになるスペースと人のつながりを通じて、組織の一員として誇りを持って働くことができる独自の文化と環境の構築をサポートします。