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ハイブリッドワークの可能性を解き明かす:V+C代表Luc Kampermanが語る「新しい働き方」とは

20 2月 2025

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近年、ワークプレイスの概念は大きく進化し、従来のオフィス中心の環境からハイブリッドワークやリモートワークを中心とした働き方へと移行しています。その「新しい働き方 (NWOW: New Ways of Working)」へのシフトを実現する上で、押さえるべきポイントは何なのか。V+Cの代表がお答えします。

今回は、過去20年以上にわたりオランダ、オーストラリア、アメリカで活動してきたマネージングパートナーのLuc Kampermanにお話を伺います。Lucはその間、世界中の数多くの大手企業が新しい働き方に向かう道のりを支援してきました。

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Q. ハイブリッドワークに移行する際の最重要事項は何でしょうか?

Luc: ハイブリッドワークを考える際は、活動の観点から見るのが最適です。アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)は、従業員が1日の中で多様な業務をこなすことを前提として働き方を見直すものです。これらの業務を効果的に遂行するためには、さまざまな作業環境が必要であり、それを支える適切な技術と文化も重要です。

ABWは、組織の目標に最も合致した活動を分析し、人間中心の視点でハイブリッドワークスペースを作り出します。定量的および定性的データを活用して、個人やチームの物理的、デジタル的、文化的ニーズに応じた戦略を構築します。

Q. 新しい働き方 (NWOW) とは何か、それがABWとどのような親和性があるのかご説明いただけますか?

Luc: 私たちが35年前に人々の働き方を改善するための専門的活動を始めた時から、仕事は「行く場所」ではなく「行うもの」であると明確にしてきました。

「多くの人々の生産性とウェルビーイングを向上させることで、働き方はより良いものになる。」これこそ私たちがビジョンとして掲げるものです。デジタル環境の活用機会に恵まれた組織は、人々が情報をいつでも、そしてどこからでもアクセスできる環境を整えるようにすべきだというアイデアを提唱してきました。

新しい働き方(NWoW)の核心は、固定的なオフィス空間や厳格なヒエラルキー、また9時〜5時の決められた勤務時間といった従来の働き方に挑戦し、柔軟でコラボレーションに満ちた、目的主導型のシステムに置き換えることです。この柔軟な働き方では、従業員のウェルビーイングや、革新性、適応力といったものを最優先します。

この新しい働き方は、仕事のプロセスや物理的なオフィス環境にメリットをもたらします。なぜなら、今では人々が紙の情報を処理するために個人のデスクに縛られることはなくなったからです。

この働き方のシフトを実現する上で、「人」が組織文化の中心に置かれます。これこそがABWの基盤です。私たちの役目は、組織やそのワークプレイス文化における物理的環境が意味するものを再構築し、組織の仕事のプロセスと活動を見直すことで、従業員を支えるために必要なものを正しく理解することだと思っています。

Q. 新しい働き方とABWの最も重要な違いは何ですか?

Luc: 新しい働き方 (NWoW) は、複数の働き方を組み合わせた概念です。もう少し具体的に説明するために、昨今の新しい働き方の特徴をいくつかご紹介しましょう。

新しい働き方(NWoW)は、仕事の進め方を改善するためのさまざまな方法を含む包括的な概念で、柔軟性、コラボレーション、テクノロジー、そして従業員のウェルビーイングに焦点を当てます。それは、現代の従業員やビジネスのニーズに適応できるよう、ワークプレイスの文化や運営方法を変革することを意味しています。

アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)は、その新しい働き方の中にある戦略の1つで、特定の業務や活動に合わせた異なる作業スペースを提供するものです。ABWは、従業員が自分の業務の性質に応じて、集中するための静かな場所、コラボレーションするための開放的なエリア、またはカジュアルなミーティングのためのブレイクアウトルームなど、どこでどのように働くかを選ぶ自由を与えてくれます

ABWは、従業員の作業活動を分析し、それを最適にサポートする方法を見つけることから始まります。それには、テクノロジー、物理的なスペース、適切なリーダーシップスタイルが必要です。再度言いますが、これには従来の働き方とは異なる新たな考え方が必要で、それまでの物事の進め方に対し真っ向から挑戦し、よりスマートに仕事を進める方法を模索することが求められます。

Q. ハイブリッドワーク型のオフィスで個人の好みと組織のニーズ(コラボレーション)のバランスをとる最良の方法は何ですか?

Luc: さまざまな働き方データの分析は、従業員がどのように働いているかについて戦略的に理解する手助けになります。実際にV+Cでは、調査やインタビュー、エスノグラフィックスタディ(観察研究)、デジタル上のコラボレーションデータや組織ネットワーク分析(ONA)などの調査・分析手法を実施しています。

これらのツールは、従業員がワークプレイスとどのように関わっているかを理解することにも役立ちます。

その後、戦略的なシナリオモデリングを通じて、将来に向けた働き方の提案を行います。これらのインサイトは、個人で使用するスペースと複数人でコラボレーションを行いながら使用するスペースの使用頻度やそのニーズを理解する上で強力な情報元となります。結果として、今後のハイブリッドワークをベースとした未来型オフィスの方向性を策定するための重要な情報となるのです。

 

Q. 戦略的に設計されたハイブリッドワーク型のオフィスにはどのようなスペースやエリアがあり、それぞれの働き方をどのようにサポートするのでしょうか?

Luc: 設計が十分に施されたハイブリッド型オフィスには、従業員が自分の業務に最適な環境を選べるように、さまざまなエリアが含まれています。適切な環境を選ぶことは、生産性、コラボレーション、ウェルビーイングを促進するのに役立ちます。

ハイブリッドオフィスが含むべき8つの主要なエリアは次の通りです:

  1. フォーカスエリア:集中力を要する個人作業のための静かなスペース。気が散る要素を最小限に減らした集中できる環境

  2. コラボレーションエリア:チームワーク、ブレインストーミング、グループディスカッションを促進するためのエリア

  3. ソーシャルエリア:従業員間のカジュアルな交流、社交、関係構築を促進するスペース

  4. タッチダウンエリア:外出中の従業員が一時的に座って作業するための短期的な作業スペース

  5. ラーニングエリア:トレーニングや専門的な分野における知識の吸収、継続的な学習のためのスペース

  6. ウェルネスエリア:健康とウェルビーイングのためのリラックス、マインドフルネス、または身体活動を行える空間

  7. プライベートミーティングエリア:機密性の高い会話や集中した議論を行うためのスペース

  8. プロジェクトエリア:フレキシブルで可動性のあるスペースを通じて、創造性と革新性に特化したエリア

Q. ハイブリッドワーク環境ではデスク予約システムを導入すべきでしょうか?

Luc: 私たちは長年の経験から、デスク予約システムはあまり効果的ではないという結論に至りました。デスクを予約するという行為は、シンプルな課題に対して不要かつ複雑な解決策を提供してしまうからです。

デスク予約システムは、オフィス全体の利用・運用計画を立てるには役立つかもしれません。しかし、個別のデスクを効率的に活用すること自体にはあまり適していません。実際のデータによると、予約されたデスクの約45%は実際には使用されていない空予約であることがわかっています。

一方で、予約システムが効果的に機能するのは、大型の会議室や、需要が高く数に限りがあるプロジェクトスペースです。これらのスペースは、アドホックな利用では確保が難しいため、予約による管理が有効です。

私たちはクライアントと協力しながら、ワークプレイス環境の改善に向けて人々の行動を研究し続けてきました。実際に、1つのチームがオフィスに出社する際、固まって一緒に座るプランをどのように立てるか、といったものも見てきました。チーム用のテーブルを予約するのが良いのか、もしくはチーム専用のスペースを確保するのが最適なのか、などをテストしながら現在も最善の方法を模索しています。

Q. ハイブリッドワークを前提としたオフィスの設計で陥りがちな失敗を防ぐためのポイントは何でしょうか?

ワークプレイス環境を変革する際に、どの組織にもお勧めしたい重要なポイントが2つあります:

  • 共同設計を目指す:
    初期のビジョン策定から新しいオフィスのレイアウト設計に至るまで、従業員を巻き込みながらワークプレイス環境を共に作り上げることは不可欠です。このプロセスを通じて、従業員の日常業務を真にサポートできる環境を実現できます。
  •  機能性を重視する:
    デザイン的な美しさばかりに注目し、実際の業務に必要な機能面がおろそかになるのは危険な兆候です。単に「使いやすく快適な空間を作る」だけではなく、ビジネスやチームの成功を支える実用的な環境を整えることが重要です。

また、組織としてどの方向に進むべきかについて、リーダー層からのインサイトも欠かせません。戦略的なアプローチを取るためには、変革の初期段階からチェンジマネジメントを意識する必要があります。

変化に前向きな人であっても、適応するためのサポートは必要です。そのため私たちは、プロジェクトの最初の段階から完了後に至るまで、専門的なアドバイスを提供し続けるようにしています。

Q. ハイブリッドワークへ移行する際、効果測定のための指標にはどのようなものがありますか?

Luc: 新しいオフィス環境の成功を測るには、リモートワークとオフィス勤務のバランスを考慮した多面的なアプローチが不可欠です。

私たちは、生産性、コラボレーション、ワークプレイス文化の健全性を総合的に測る指標を重視しています。

ここではハイブリッドワークの成功を評価するために推奨する5つの主要な指標カテゴリーをご紹介しましょう:

 

1. コミュニティ意識に関する指標

  • 従業員の意識調査(パルスチェック / エンゲージメント調査):定期的なアンケートを実施し、従業員が会社やチーム、オフィス環境にどれだけつながりを感じているかを評価
  • チームイベントへの参加率:対面・オンラインのチームビルディング活動、社内イベント、全社ミーティングへの参加率を測定
  • 定着率(リテンションレート):ハイブリッドワーク環境における帰属意識の指標として、従業員の定着率を分析

2. 知識・アイデア共有に関する指標

  • 従業員の意識調査(パルスチェック / エンゲージメント調査):知識やアイデアの共有がどの程度スムーズに行われているかを従業員の評価をもとに測定
  • コラボレーションツールの利用度調査: SlackやMS Teamsなどのツールの使用頻度をモニタリングし、知識共有やブレインストーミングの活発度を測定
  • イノベーション指標(長期的指標):新しいアイデアの創出数、特許申請数、新規プロジェクトの立ち上げ数などを記録し、コラボレーションの成果を評価

3. オフィスの利用状況とダイナミクスに関する指標

  • オフィス出社率:従業員のオフィス出社率を定期的に記録し、活気ある環境を維持するために適切な出社率(例: 週に数日70%程度の出社率)を目指す
  • スペース活用率:会議室、コラボレーションエリア、集中作業スペースの利用状況を分析し、オフィス環境が適切に機能しているかを確認
  • オフィス環境満足度:オフィスのエネルギーレベル、騒音、全体的な雰囲気に関する満足度を調査。

4. 生産性・業績に関する指標

  • 従業員の意識調査(パルスチェック / エンゲージメント調査) : ハイブリッドオフィスが個人・チームの生産性をどの程度サポートしているかを測定
  • 個人・チームのパフォーマンス評価: 定期的なパフォーマンスレビューを実施し、ハイブリッドワーク環境が業績向上に寄与しているかを分析
  • タスク完了時間: リモート勤務とオフィス勤務の作業時間を比較し、業務効率に差があるかを評価

5. 従業員のウェルビーイングに関する指標

  • ワークライフバランスのスコア:ハイブリッド環境下で仕事と私生活のバランスが取れているかを調査
  • 欠勤率:リモートワークとオフィス勤務それぞれでの欠勤率を追跡し、バーンアウトやエンゲージメント低下の兆候を把握

これらの指標を組み合わせることで、企業はハイブリッドワーク環境の実態を包括的に理解できます。どの要素がコミュニティ意識を醸成し、知識共有を促進し、ダイナミックなオフィス環境を生み出しているのかを明確にしながら、より良い職場づくりを進めることができるでしょう。

Q. V+Cに関わる皆さまへどのようなメッセージを伝えたいですか?

Luc: V+Cでの22年間の歩みと、私たちの35周年という節目を迎え、深い誇りと感謝の気持ちでいっぱいです。V+Cは30年以上にわたり、新しい働き方を切り拓き、組織がより良い環境を創り出せるよう支援してきました。

私たちが長く成長し続けてこられたのは、常にイノベーションを追求し、変化に適応し、現状に挑戦し続けてきたからです。この場を借りて、共に歩んでくださったパートナー、クライアント、そしてV+Cを支えてくださるすべての方々に心からの感謝をお伝えしたいと思います。皆さまの信頼が、私たちの使命を前進させ、世界中の職場をより良いものへと変革する力になっています。

この節目を迎え、私はこれからの未来に大きな期待を抱いています。これからも力を合わせて、働くことをより生産的で充実したものにするために、共に歩んでいきましょう。未来の働き方、そして私たちのこれからの旅路に乾杯!

Q. 最後に、あなたにとって"Work"を一言で表すなら?

Luc: 私にとって「働く世界」を表す言葉は 「好奇心」 です。

好奇心こそが、継続的な成長の原動力です。問いを投げかけ、新たな視点を探し、変化を受け入れる力を与えてくれます。好奇心があるからこそ、より良い働き方を見出し、従来の考え方に疑問を持ち、変化し続ける環境の中で柔軟に適応することができます。

私の経験では、この探究心と新しいことに挑戦する姿勢こそが、意義あるイノベーションと成長につながるのです。

未来の働き方は「柔軟性」が鍵に

「New Way of Working(新しい働き方)」は、一時的なトレンドではなく、働き方に対する考え方そのものを見直し、働く場所や仕事と生活の関係を再構築する大きな変革です。私たちは、柔軟性、ウェルビーイング、テクノロジー、継続的な学びを軸に、多くのクライアントのワークプレイス環境を進化させ、従業員がより活躍できる場を生み出してきました。

これからの未来に向けて、ひとつ確かなことがあります。それは、「未来の働き方はすでに始まっており、それは従業員のニーズとテクノロジーの可能性によって推進される」ということです。この変化は一時的なものではなく、今後も働く環境を根本から変えていく重要なシフトとなるでしょう。

私たちはお客様と協力し、ワーカーの働き方が豊かになるスペースと人のつながりを通じて、組織の一員として誇りを持って働くことができる独自の文化と環境の構築をサポートします。